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No.003 屋上緑化〜都市は緑に飢えている(04/15,1999) 津村喬
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温暖化防止対策の一環として屋上緑化がすすんでいる。いままで困難であった屋上緑化がさまざまな技術の開発で容易になってきた。もちろん、不況下における新たな需要創出の側面もある。無理やり都市に自然を持ち込むという感は否めないが、今の都市をご破算にして作りなおすことが出来ない以上は歓迎すべきことだろう。
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機械メーカーのコマツは東京赤坂の自社の屋上360平米に、ハゼやシラカバ、シャクナゲ、ハーブ類など500種類以上の植物をいっぱいに植えている。築地の聖路加病院は、低層病棟の屋根を緑のプロムナードにして患者が憩えるようにしている。東京、大阪などの大都市で、大手企業が自社ビルの屋上緑化にとりかかる例はどんどん増えているという。一方で、住宅マンション業者が「環境にやさしい」を売り物に、屋上ガーデン付き物件を競って売りだし始めている。ただの装飾でなく、実用的な菜園にしているところも多い(1998年10月3日付『日本経済新聞』)。
畑を借りるとなると大ごとだし、郊外まで通うのが大変で長続きしない。かといって鉢植えでは作れるものが限られる。屋上菜園は、額に汗して食べるものの一部でも作りたい、という最近の都市生活者のぜいたくに応えるものとして成功しているのであろう。ふだんつきあいのないマンションの住人達とも、畑仲間となればつきあいがひろがっていくというメリットもある。
屋上緑化は、屋上の照り返し緩和とひび割れ漏水防止、二酸化炭素の吸収、ビルの冷暖房費の節約などいいことづくめである。東京都内の緑化可能な建物の屋上面積は合計すると品川区の面積に匹敵するという。しかしまだ屋上庭園になっているのはほんとのわずか。東京都北区や愛知県岡崎市が屋上緑化促進の助成に乗りだし、大阪市、高知市などが推進計画を立て、 建設省(都市局公園緑地課)も税制優遇措置などでこれに取り組むことになっているというから、ここに来て風向きが変わってきてた。
また、それに見合った新しい技術も開発されてきた(1998年10月5日付『日経』)。屋上に土を全面的に入れるとなると建物を補強しなければならないことも多く、今まではコスト面でネックになってきたが、軽量資材の活用が進んでいる。例えば、土をつかわずにヤシ殻を使ったマットでハーブが育てられるとか、屋上に並べるだけで排水工事は不要という火山の砂利を活用したプランターなど、新しい技術が出てきている。そして実際にこれが普及しだしている。
あるメーカーは、家庭用にベランダに敷いてそのまま種をまけるマット状の人工土壌を開発、月間4万枚のヒット商品になった。屋上緑化の時代的必然に目をつけたベンチャー企業が成功した例があちこちに出てきた。屋上緑化の市場規模は、1990年に1200億円だったが、2010年には三倍になると予測されている。
ひと昔前までは環境教育プログラムの中で、夢のような、しかしやろうと思えばできないはずはない未来のこととして語られていた屋上緑化の普及が波に乗り始めたのはいいことである。植物の側にしてみれば、疑似環境の中でしんどい思いをさせられるということで、そんなことより森林を大事にしてくれということだろうが、都市のありかたを根本的に変えることがすぐにはできない以上、こうした動きは必然的なものだろう。
緑化率が10%を下回ると住んでいる人は「ここは人間の住む場所ではない」と感ずる、という説があるが、大阪は世界の大都市で最低の4%前後である。東京も皇居や明治神宮など「皇室がらみ」をのぞけば似たような状況だろう。ビルの大部分が緑化されていけば、上から写真をとれば緑だらけの町になるかも知れない。芝居の書き割りのような気もしないではないが、どうだろうか。■
(本記事はメールマガジン『Navigator』No.55=1998年10月5日号から転載しました)
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| 津村喬(つむら・たかし) |
■プロフィール
1948年東京生まれ、大津市在住。学生のころから評論活動を続け現在に至る。また1994年、NHK教育テレビ「気功専科2」で講師を務めるなど、気功や東洋医学・代替医学の普及につとめる。1996年より、メールマガジン『Navigator』を創刊、常任ライター兼編集主幹に。同誌で、高野孟とともに、政治、経済から環境、教育問題まで、幅広い分野で評論を展開。著書に『毎日できる東洋健康法』『気脈のエコロジー』『脳力トレーニングの方法』『メディアの作り方』『神戸難民日誌』『快脳気功』など多数。
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