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No.032 公共事業は誰のため? (08/28,1999) 美里学
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昨年の9月に大型の台風7号が日本列島を駆け抜けた。その時、子供達は「休みの日に警報が出されてもつまらない」と不謹慎なことを言っていたのでよく記憶に残っているのだが、その台風では全国で10人以上の犠牲者がでて、神戸では雨のピークと満潮とがかさなり、床下浸水の被害もでた。
この神戸の床下浸水の被害は、新聞によると「行政側の責任者が防潮堤をもう少し早く閉める指示を出していれば被害を出さなくてすんだのではないか」というコメントに対し行政側の回答は「思っていた以上に・・・」ということであった(この、“思っていた以上に”や“思っていたのとはうらはらに”という言葉は最近の行政の弁解で流行文句のように使われている)。その後、管理責任者の処分も決まったとのことだが、その責任者はわずか数カ月間、給料の1/10の減給だけですんでいるとか。
その程度の処分だから、今年6月に降った豪雨でもまた同じところで浸水の被害をだしてしまうことになる(処分を重くするだけで問題が解決するとはいわないが)。今回は県の土木部職員が「昨年の水害に比べ、降雨量が多く、水位の上がり方が早かったようだ。復旧工事が完全に終わっていれば氾濫はおきなかっただろう」(『朝日新聞』より)と昨年と同様弁解のコメントをしている。
しかし、梅雨時の雨を考慮すれば復旧工事をそれまでに完了させるのは当然すべきことだ。それが終わっていないということは住民の立場に立った復旧工事が行われていなかった、すなわち行政側の落ち度であり、再度被害を受けた住民からは「人災だ」といわれても、やむを得ないのではないだろうか。
公共事業と住民の利益をあらためて考えてみたい。阪神淡路大震災では、被害を受けた高速道路や港湾施設などは根本的な問題の検討も中途半端なまま、ただ単に強度を強くして建設されたかのようなスピードで復旧された。しかし、最近では震災後復旧したJRのコンクリートの橋脚などからも錆がでてきたことが分かり、復旧の仕方に問題があったのではないかという意見もあがってきている。また神戸空港についても、住民の理解が得られないまま着々と準備が進められているが、将来の経済波及効果など十分な情報公開はされていない(これに対しては反対派住民が市長リコール運動を宣言したので、今後の成り行きに注目したい)。
そして、このような公共事業に関わることができても、2次・3次の下請けや材料メーカーなどは、値段の叩き合いでほとんど利益が出ないのが現状だという(1次請負い業者の倒産により未払いになるケースも増えてきている。また、未払いになるケースの金額は民間より公共物件の方が大きいという報告もある)。公共事業が景気の回復に役立っているという報告があちこちでなされているが、その中身はいったいどうなっているのか(つまり、誰が得しているのか?配分が問題だ)。「『公共事業が景気の回復に役立っている』なんてあんまり実感できない」というのが市民の素直な感想ではないだろうか。
本当に必要な市民のための公共事業なら何も問題はない。しかし、それを後回しに市民の理解を得られていない公共事業を優先している場合、地域住民は住みやすい住環境が約束されているわけではなく、景気の回復をイメージすることすらできないだろう。すこしずつ見直しの機運が高まっている従来型の土木行政が、景気対策を口実に再びまかり通るようになるのだけはご遠慮願いたい。■
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